子どもが生まれてからの親としての自分の生活や精神状態について、なかなか巧い表現が見つからないなあと、かねがね感じていました。
生の充実
というと悪くは無いのですが、仕事や趣味の多くを犠牲にしますので、心が真に常に充実感に満たされているわけではないように感じます。
人生が楽しくなった
というと悪くは無いのですが、一方で、疲労感や徒労感も定期的にやってきますし、不快感もあれば自分を律せないことへの悔恨も多くあります。
幸福感
というと悪くは無いのですが、悩みや葛藤も多く、常々ほんわか幸せに浸れているわけでもないように感じます。
そう悶々と考えて何年も過ぎて行く中で、生きがい、という表現にたどり着きました。
神谷美恵子さんが『生きがいについて』という作品で述べている箇所を抜粋します。
『たしかに生きがい感は幸福感の一種で、しかもその一番大きなものといえる。けれどもこの二つを並べてみると、そこにニュアンスの差があきらかにみとめられる・・・生きがい感には幸福感の場合よりも一層はっきりと未来にむかう心の姿勢がある』
『もう一つ幸福感と違うところは・・・生きがい感のほうが自我の中心にせまっている、という点である。幸福感には自我の一部だけ、それも末梢的なところだけで感ずるものもたくさんある』
『・・・はじめからいえることは、人間がいきいきと生きて行くために、生きがいほど必要なものはない、という事実である。それゆえに人間から生きがいをうばうほど残酷なことはなく、人間に生きがいをあたえるほど大きな愛はない』
『その意味では、子は親に感謝すべきというが、むしろ、親が子に感謝しなければならない。』
子どもが生まれてからの生活・人生は、本当に深く、自分に生きがいを与えてくれたと感じます。
佐々木さんの「子どもへのまなざし」という本、これも長男が誕生した頃から繰り返し読み直していますが、何よりも一番好きなのは、タイトルです。
これからも子どもの成長にあわせて色々な壁や葛藤や問題に家族はぶつかると思いますが、常にこの「まなざし」を意識して行きたいと、心から思います。
このまなざしに、感謝という初心を込め続けていけるかどうか、これを問い続けていきたいと思います。
ただ健康に育って欲しいと、思っていたのがいつしか、より良く生きて欲しい、より優れて出来て欲しい、より立派であって欲しいと、思ってしまう親心。
これは、拭っても拭っても振り払いきれない煩悩だろうと思います。
別に良い大学なんか行かなくても、別に良い職業に就かなくてもいいからと、そう今は思っていても。
この作品は、その初心に立ち返らせてくれる一冊です。
過干渉を諫め、「待つ」まなざしをすすめます。
個性を認め、また、子ども達だけの世界の大事さを認める「まなざし」をすすめます。
その通りだなあとしみじみ感じます。
生きがいを与えてくれることへの感謝の気持ちと共に、「待つまなざし」を忘れずに行きたいと思う毎回の読後感です。